とんかつ屋
「とんかつ」を提供する店舗における2021年1月現在の課題。
OSM上にあるとんかつ店の情報
- OpenStreetMap(以下OSM) TagInfo内で ”とんかつ” と検索してヒットするnameタグ 48件
- 店舗情報(Node)として既にOSM上に存在していたのが 45件
- OSM TagInfo内で ”tonkatsu” と検索してヒットするnameタグ 24件 うち13件が上記の結果に含まれていないものであった。
- OSMにおけるとんかつは店舗情報(Node)としての登録、道路(way)としての登録合わせて61店舗であった。(2021年1月現在)
- 建物(Node)としてではなく、道路(way)として登録されているものも存在した。
- タグが統一されておらず、64種類のタグが使用されていた。
- 多言語表示に対応しているものとそうでないものが存在した。
とんかつの表記はどのようにすべきか
とんかつ、豚カツ、豚かつ、トンカツに正しい表記は存在しない。
[1]明治 40 年初頭には、屋台料理の一つとして「ポ ークカツレツ」が「トンカツ」と呼ばれ定着していた。 しかし、「トンカツ」という名称は家庭向けの料理書 には記載が無く 、おそらくスラングとされていて正 式名称としては扱われず、公的な場所では使用され なかったと考えられる。
屋台料理の「トンカツ」から「とんかつ」へと何らかの要因によって表記が変化していったとされる。
OSM TagInfo内での検索した結果
”とんかつ” と検索してヒットするnameタグ 48件
"豚カツ” と検索してヒットするnameタグ 2件
”豚かつ” と検索してヒットするnameタグ 0件
”トンカツ” と検索してヒットするnameタグ 4件
”tonkatsu” と検索してヒットするnameタグ 24件
であった。「とんかつ」がもっとも一般的な呼び名として利用されていると言える。
とんかつ店はamenity=restaurant, amenity=fast_foodのどちらに分類されるか。
OSM wiki によるとそれぞれ下記のように定義されている。
▶︎amenity=restaurant
amenity=restaurant は座席があり、ウェイターが給仕して、一式の食事を提供する、一般的にフォーマルなレストランのためのものです。(許可制の場所では)多くは酒類の販売免許を得ているもの。
- 座席があること
- ウェイターが給仕すること
- 酒類の販売
▶︎amenity=fast_food
amenity=fast_food は早いカウンターのみのサービスと、食べ物の持ち帰りに重点を置く場所です。食べ物を食べる前に、カウンターで支払いを済ませます。使い捨ての皿やその他の素材で食べ物を提供し、プラスティックの食器で食べます。たいていは、必ずではありませんが、2~3個以上の、掃除しやすい椅子とテーブルの座席があります。
- カウンター席のみのサービス(支払いも含む)
- 持ち帰り可能
- プラスティックの容器
- 2〜3個以上の掃除しやすい椅子とテーブルの座席
酒類の販売について
松屋フーズが経営する松乃家、とんかつ和幸などのとんかつチェーンでは店舗によるもののビールなどの酒類の販売を行っている。
個人が経営するとんかつ店においてもお酒をおいているお店は多い。
よってrestaurantのタグに当てはまると言える。持ち帰り制度と座席について
松のやなどのチェーン店では券売機での支払いを先に済ませ、店内で食べる場所と持ち帰りができるようなシステムを採用している。
一方で、チェーン店でない個人経営のとんかつ店ではカウンター席、テーブル席があり、ウェイターが給仕するamenity=restaurantのような仕様である場合が多い。新型コロナウイルスの影響により一部店舗では持ち帰りサービスを開始しているが、多くの店は持ち帰りよりもテーブル席で食事をすることを主としているためrestaurantタグが望ましいと考えられる。
JA:Naming sampleを参考にすると、amenity=restaurantの欄にとんかつチェーンである和幸が存在する。
これらを踏まえて、とんかつ店は基本的にamenity=restaurantに統一できるのではないかと考える。
cuisineタグは何を設定すべきか
とんかつ店における61店舗の情報のうちcuisineタグは7種類存在した。
現在のとんかつ店におけるcuisineタグの種類
- "japanese"として登録されていたPOIが19店舗
- "japanese;pork cutlet"として登録されていたPOIが1店舗
- "tonkatsu"として登録されていたPOIが9店舗
- "regional"として登録されていたPOIが2店舗
- "fried_food"として登録されていたPOIが1店舗
- "friture"として登録されていたPOIが1店舗
- "friture;japanese"として登録されていたPOIが1店舗
- 未記入が14店舗 であった
使用されたタグの検討
OSM wiki定義によればcuisineは飲食が可能な場所で提供される、料理の種類を記述したものである。 使用されたタグをそれぞれ検討してみる。
- cuisine= japanese 和食
- cuisine=regional 郷土料理、正確な説明がない場合に使用
- cuisine=fried_food 油で挙げられた食べ物たいていは持ち帰り用
- cuisine=friture オランダやベルギーのチップ店
- cuisine=tonkatsu は値としての定義は存在しなかった
とんかつはjapaneseの中の一つであるtonkatsuとして定義することができる。
韓国では日本と同じスタイルのとんかつ店が存在し、韓国語の表記では「돈까스」(ton-kka-ssŭ)となる
TagInfo内で ”돈까스” と検索してヒットするnameタグ 3件存在した。
これは明治維新時に「cutlet」として輸入されたものが、当時日本統治下であった韓国に流れ、洋食としての「cutlet」に似た「とんかつ」であるため、日本のとんかつとは似て非なるものであると捉えることができる。和食としてのとんかつを考慮するとcuisineタグは「japanese;tonkatsu」を提案する。
- ↑ 増子保志,2019,「とんかつ」の受容と変容に関する一考察、日本国際情報学会誌『国際情報研究』,16-1 https://www.jstage.jst.go.jp/article/gscs/16/1/16_3/_pdf/-char/ja